公開 2026年11月1日 更新 2026年11月1日 監修:眼科専門医(東京都内で白内障手術を執刀する現役眼科医)

後発白内障のレーザー治療|手術後に再びかすむ原因と治療の流れ

この記事の要点

後発白内障とは:手術後に再びかすむ原因

白内障手術では、濁った水晶体の中身を取り除き、水晶体を包んでいた薄い袋(水晶体嚢)の中に眼内レンズを固定します。このとき袋の後ろ側の膜(後嚢)は、眼内レンズを支える土台として残します。手術後、この袋の内側に残ったわずかな水晶体の細胞が増殖して後嚢に広がり、膜が濁ったりしわになったりするのが「後発白内障」です。

眼内レンズそのものが濁るわけではなく、白内障が再発したわけでもありません。人工のレンズは濁らないため、白内障の手術をやり直す必要はなく、濁った膜だけをレーザーで処置すれば見え方は回復します。

項目内容(目安)
起こる時期手術後数か月〜数年。多くは1〜3年以内
頻度数年で10〜20%程度。レンズの素材・形状の改良で以前より減少
起こりやすい人比較的若い方、糖尿病・ぶどう膜炎・アトピー性皮膚炎がある方、強度近視の方
治療YAGレーザー後嚢切開(外来・数分・保険適用)

こんな症状があれば後発白内障を疑う

後発白内障の症状は、もともとの白内障とよく似ています。手術直後はよく見えていたのに、時間がたってから次のような変化を感じたら、予約日を待たずに一度受診してください。

多焦点眼内レンズは光を複数の焦点に振り分ける構造のため、わずかな後嚢の濁りでも見え方の質が下がりやすく、単焦点の方より早めに治療を勧めることがあります。なお、同じような見えにくさは黄斑浮腫や網膜の病気、ドライアイでも起こります。後発白内障かどうかは細隙灯顕微鏡で後嚢を観察すればすぐにわかるため、自己判断せず診察を受けることが大切です。

YAGレーザー後嚢切開の流れ

治療は「YAG(ヤグ)レーザー後嚢切開術」と呼ばれ、濁った後嚢の中央にレーザーで小さな丸い窓を開け、光の通り道を作る方法です。目を切らずに外来で行えます。

段階内容所要時間の目安
診察・検査視力・眼圧の測定、細隙灯顕微鏡で濁りの程度と眼底を確認30分〜1時間
準備瞳を開く目薬(散瞳薬)と麻酔の目薬、眼圧上昇を防ぐ目薬をさす20〜30分
照射顎台に顔を乗せ、目に専用のコンタクトレンズを当ててレーザーを照射数分
治療後眼圧を測定して問題がなければ帰宅。後日あらためて診察30分〜1時間

照射中は小さな音や光を感じますが、痛みはほとんどありません。入院や眼帯は不要で、多くの方は当日から翌日にかけて見え方の改善を実感します。散瞳薬の影響で治療当日の数時間はまぶしく、ピントも合いにくいため、当日は車・バイク・自転車の運転は控え、公共交通機関や付き添いの方と来院してください。

施設によっては診察当日にそのまま治療できる場合と、診断後に治療日を改めて予約する場合があります。白内障手術を受けた施設以外でも治療は可能です。

費用の目安

後発白内障のレーザー治療は健康保険が適用され、診療報酬は全国共通です。片眼あたりの窓口負担の目安は次のとおりです(治療当日の診察・検査を含む概算)。

負担割合窓口負担(片眼・概算)
1割負担約2,000円
2割負担約3,500〜4,000円
3割負担約5,000〜6,000円

白内障手術本体(3割負担で手術当日約4.5万円)と比べると負担は小さく、高額療養費制度の上限に達することは通常ありません。民間の医療保険では、レーザー治療が手術給付金の対象になる商品もあるため、契約内容を保険会社に確認するとよいでしょう。白内障手術そのものの費用は白内障手術の費用はいくら?で解説しています。

治療後の注意点と起こりうる合併症

YAGレーザー後嚢切開は安全性の高い治療ですが、次のような変化が起こることがあります。

治療後に飛蚊症が急に増えた、光が走って見える(光視症)、視野の一部が欠ける・カーテンがかかったように見えるといった症状が出た場合は、網膜裂孔・網膜剥離の可能性があります。数日〜数か月後でも、すぐに眼科を受診してください。

一度後嚢に窓を開ければ、同じ目で後発白内障が再び問題になることはまずありません。手術後に起こりうるほかの合併症は白内障手術のリスクと合併症にまとめています。

後発白内障を早く見つけるために

後発白内障は予防する確実な方法はありませんが、早く見つけて適切な時期に治療すれば、見え方の不便を長引かせずに済みます。白内障手術後は、見え方に問題がなくても定期検診を続けてください。検診では後嚢の状態だけでなく、眼圧や網膜も確認できます。

見えにくさが少しずつ進む変化は自分では気づきにくいため、片眼ずつ手で隠して見え方を比べる習慣も役立ちます。術後の過ごし方や検診の目安は白内障手術後の生活と注意点を、通院先を探す場合はエリア別の施設一覧やクリニックの選び方を参考にしてください。

この記事に関するよくある質問

Q. 後発白内障は放っておいても大丈夫ですか?

後発白内障そのものが失明や目の病気の悪化につながることはありません。ただし自然に治ることはなく、濁りが進むほど見えにくさが続きます。生活に支障を感じたらレーザー治療を受けるのが基本で、急ぐ必要はないものの、我慢し続ける理由もありません。

Q. YAGレーザー治療は痛いですか?

痛みはほとんどありません。目薬の麻酔をしてレンズを目に当て、数分間レーザーを照射します。照射時に「パチッ」という小さな音や光を感じる程度で、メスも使わず、終わったらそのまま帰宅できます。

Q. レーザー治療後に気をつけることはありますか?

治療後数時間は瞳を開く目薬の影響でまぶしく、車の運転はできません。一時的に眼圧が上がることがあるため、眼圧を下げる点眼や後日の診察が指示されます。治療後に黒い点や糸くずのような飛蚊症が増えることがありますが多くは数週間で気にならなくなります。急に増えた、視野が欠けるといった場合はすぐ受診してください。

本記事は、東京都内で白内障手術を執刀する眼科専門医が内容を確認しています。記載している費用は2026年時点の診療報酬・一般的な相場にもとづく目安で、施設や条件により異なります。個別の治療方針は必ず担当医にご相談ください。