白内障手術のリスクと合併症|頻度・症状・対処法
この記事の要点
- 白内障手術は年間150万件以上行われる安全性の高い手術ですが、合併症がゼロではありません。
- 最も重い術後眼内炎は数千件に1件程度。点眼を守り目を触らないことが最大の予防です。
- 術後数か月〜数年で起こる後発白内障は「再発」ではなく、外来のレーザー治療で改善します。
白内障手術の安全性
白内障手術は日本国内で年間150万件以上行われている、最も件数の多い手術の一つです。技術と機器の進歩により、現在は片眼10〜20分・日帰りで行うのが標準となり、合併症の頻度も大きく下がりました。とはいえ手術である以上リスクはゼロではなく、術前に説明を受け、術後の注意を守ることが大切です。
手術中に起こりうる合併症
- 後嚢破損・硝子体脱出(1〜2%程度):眼内レンズを支える膜が破れ、目の奥のゼリー状の組織が前に出てくることがあります。追加の処置で対応し、眼内レンズの固定方法を変えることがあります。手術時間が延び、術後の炎症が強めに出ることがあります。
- チン小帯断裂:水晶体を支える線維が弱い方(高齢、落屑症候群、外傷歴など)で起こりやすく、レンズを縫着・固定する追加手術が必要になることがあります。
- 駆逐性出血:極めてまれ(数千〜1万件に1件以下)ですが、目の奥からの大出血で視力に重い影響が出ることがあります。
術後に起こりうる合併症
| 合併症 | 頻度の目安 | 症状・対処 |
|---|---|---|
| 術後眼内炎(細菌感染) | 数千件に1件 | 術後数日〜1週間の急な視力低下・痛み・充血。緊急の治療(抗菌薬の眼内投与・硝子体手術)が必要。最も重要な合併症。 |
| 眼圧上昇 | 比較的多い(一過性) | 術後数日の眼圧上昇は点眼や内服で対処。緑内障のある方は注意。 |
| 黄斑浮腫 | 1〜2% | 術後数週間〜数か月で網膜の中心がむくみ、視力低下・ゆがみ。点眼・注射で多くは改善。糖尿病の方でやや多い。 |
| 網膜剥離 | 0.5〜1%程度(強度近視で高め) | 飛蚊症の急増、光視症、視野欠損。手術が必要。術後数か月〜数年後にも起こりうる。 |
| 角膜浮腫 | 一過性は多い | 術後数日のかすみ。角膜内皮細胞が少ない方では長引くことがあり、まれに角膜移植が必要。 |
| 眼内レンズの度数ずれ・位置ずれ | まれ | 予測との差が大きい場合は眼鏡で調整、レンズ交換や追加矯正を検討。 |
| 後発白内障 | 数年で10〜20% | 後嚢の濁り。外来のYAGレーザー(数分・保険適用)で改善。 |
後発白内障は「再発」ではない
手術後数か月〜数年して再びかすんで見える場合、多くは眼内レンズを支える膜(後嚢)に残った細胞が増殖して濁る「後発白内障」です。白内障そのものの再発ではなく、外来でYAGレーザーを数分照射して膜の中央に穴を開けることで、その場で見え方が改善します。痛みはなく、保険適用で、入院も不要です。若い方や糖尿病のある方でやや起こりやすいとされています。
リスクを下げるために患者さんができること
- 点眼薬を指示どおり続ける:抗菌点眼は感染予防の要です。自己判断でやめない。
- 目を触らない・こすらない:術後1か月程度は特に注意。就寝時の保護カバーも指示があれば使う。
- 術前に持病と内服薬をすべて申告する:糖尿病、緑内障、前立腺肥大の薬(α遮断薬:手術中に瞳孔が縮む「虹彩緊張低下症候群」の原因)、抗凝固薬など。
- 異常があればすぐ受診する:急な視力低下・痛み・充血・目やに・光視症は、予約日を待たず連絡を。
- 術後の定期検診を受ける:網膜剥離や後発白内障は数か月〜数年後にも起こるため、自覚症状がなくても検診を続ける。
合併症のリスクが高い方
強度近視(網膜剥離)、糖尿病(黄斑浮腫・感染)、緑内障(眼圧上昇)、落屑症候群やチン小帯脆弱(レンズ固定の問題)、角膜内皮細胞減少(角膜浮腫)、アトピー性皮膚炎(網膜剥離・感染)、過去に目の手術や外傷がある方などは、通常より慎重な術前評価が必要です。該当する方は、合併症への対応体制が整った施設(総合病院・大学病院や、硝子体手術にも対応する眼科)での手術が適していることがあります。クリニックの選び方もあわせてご覧ください。
この記事に関するよくある質問
Q. 白内障手術で失明することはありますか?
極めてまれですが、術後眼内炎や重い網膜剥離が適切に治療されなかった場合に高度の視力障害が残ることがあります。頻度は数千件に1件以下で、早期発見・早期治療で多くは視力を保てます。
Q. 白内障は手術後に再発しますか?
眼内レンズを入れた目に白内障が再発することはありません。術後に再びかすむ場合は「後発白内障」で、外来のレーザー治療で改善します。
Q. 白内障手術の後、眼内レンズの度数が合わないことはありますか?
術前検査の精度は高いものの、目の長さや角膜の形によっては予測とわずかにずれることがあります。多くは眼鏡で調整でき、ずれが大きい場合はレンズ交換や追加の矯正を検討します。